JIROKICHIも大プッシュ! ストリートから現れたボーダーレス世代 「ローホー」は日本一を目指す!
4月1日、高円寺JIROKICHIに噂のシンガー、ローホーを観た。 昨年10月にリリースされた自主製作盤『Garage Pops』が評判になり、あれよあれよとPヴァインから全国デビューが決まった。
1988年、大阪・八尾出身。 ブルース・ロック好きな両親の影響もあり、幼い頃から様々な音楽を聴いて育つ。その後家庭は紆余曲折あり、ヨーロッパへの一人旅、そして二度のホームレス生活。主に大阪のアメリカ村の路上や、クラブが活動場所だった。 アルバム『ガレージ・ポップス』は、こうした実体験と、この世代ならではの豊かな音楽体験から生まれた。
とは言え、<新生Garage!?ヒップホップでレゲエでブルースでロック。ジプシー・ヒップホップとでも言いたくなるギターを掻き鳴らし叫ぶガレージ・ポップ>というPヴァインの宣伝文句に、少し警戒した。 その気になれば、様々な音楽がいくらでも聴ける時代。 あれもこれも吸収して、吐き出すのはあたりまえになってきた。(※写真上は、ローホーとヒューマンビートボックスを操るISSEI) ただ、吸収したものを消化しているかどうかはまた別だ。 様々な音楽をつまみ食いして、それらしく装っている場合も少なくない。 ジャンルの壁をとっぱらったことを理由に、足場を固めずお茶を濁している場合もある。 だが、ローホーのアルバムは、確かにボーダーレスだった。 彼が確かに心を動かしてきたいろいろな音楽が透けてみえる。 彼自身の中に波打つビートとメロディーがある。 言葉もそうだ。
日本語のラップにあまり良い印象を持っていなかったのだが、彼のラップは必然だと感じた。ラップを演じているのではない。ノリで言葉を選んでいるのではないと思えた。
せつないバラード「土砂降りの休日」だってラップと言えばラップだ。 鋼のようなしなやかさを感じた。その人に会いたくなる熱感があった。
◆ジャンルじゃない、大事なのは熱量。 JIROKICHIのライヴは、アルバムよりもっとブルージーなフィーリングがにじみ出ていた。 ギターのボディを叩くスラム奏法をまじえ、スタンドマイクにくくりつけたカズーに思いきり息を吹き込みながら、エネルギッシュに弾き叫ぶ。 輝いてるな。歌うのが本当に楽しいんだな、とわかる。 ジャンルじゃない、熱量。とローホー。
「ヒップホップにも嫌いなものはある。オハイオ・プレイヤーズならなんでもいいってわけじゃないぜ。レゲエもそう、ブルースもそう、フォークも。」 正直だなと思う。
「これ(歌うこと)で生活できるなら、俺は日本で一番働きものになる自信がある」 と笑顔を見せるローホー。いつか武道館でやりたい、フジロックに出たい。 彼の中ではおぼろげに見えているのだろう。 大阪ならではのサービス精神もあって、楽しいステージだった。 もちろんまだ未完成な部分も多い。 世代を超えて広い層にアピールするためには、まだまだ変わっていくべきところもあるだろう。
だが、彼にはまだ時間がある。 今のような硬着しない姿勢を保ち続ければ、どんどん広がってゆくだろう。 育ってきたコミュニティから大きく羽ばたいてほしい。 ◆高円寺JIROKICHIにレギュラー出演決定 JIROKICHIでは、そんなローホーをプッシュ。 2か月に1度、様々な形での出演が決まっている。 次は、5月7日、ヒロナリの好例むちゃブリセッションだ。 ベテラン揃いのバンドと、どんな化学反応を起こすのか楽しみである。 と同時に、これはJIROKICHIにとっても新たな一ページになりそうだ。 この夜も、JIROKICHIには、ターンテーブルが2台据えられ、ライヴの前後とインターバルには、 DJ Martin-Kinooが次々にお皿を回した。 ヒップ、ホップ、レゲエ、ソウル。インターバルにはRCサクセション、シナロケ、泉谷しげる。 これがローホーの住んでる世界なのかなと思う。 「店が始まったころ、ジロキチのマスターが、フォークとブルースをつなぐ存在になりたいと言ったって書いてありましたけど、俺がその役割になります!」 事前にJIROKICHIのスタッフから渡された、店の40年を描いた本『ジロキチ・オン・マイ・マインド』を読んだローホーは、強く宣言する。 ローホーには、世代をつなぐタテ軸になってほしい。 考えてみれば、40年前、亡きジロキチのマスターが胸躍らせた関西のブルースやソウルのミュージシャン達もあのころ、ローホーと同じように、ぎらぎら輝いた年代だったのだ。 新たな時代を切り拓いていくのは若いエナジーだ。
ローホー/ガレージ・ポップス ro-ho / Garage Pops (Pヴァイン PCD-22394) ¥2,200+税 3/16発売
<曲目> 1. 浮き草 2. Skit~ご挨拶~ 3. ミンナノウタ 4. Genpatsu Boogie 5. One Day 6. Neet Neet 7. 死に逃し 8. Skit~Oh! Psychedelic Baby!~ 9. 土砂降りの休日 10. DJアイアム 11. Get My Money