「まるでいつもの夜みたいに」 高田渡 東京ラストライブが映画化
2005年4月、北海道の公演中に倒れ、還らぬ人となった高田渡。その最後の東京ライブ=人生最後の単独ライブをおさめた映像が公開されることになった。
3月27日。東京には桜も咲き始めたころだろうか。 ギターケースを背負い、タバコを吸いながら、自宅を出発し中央線の三鷹駅へ向かうシーンから映画は始まる。
カメラは一台。ひたすらその横顔を追う。インタビューも歩きながらだ。 56歳というには、老成したような表情。 カメラを見やるでもなく訥々と、しかし丁寧に渡さんは言葉を返す。
ライブ映画を期待したり、映画『タカダワタル的』の印象が強いと、少し物足りなく感じるかもしれない。だが逆にその装飾のない距離感が、高田渡という“人”のありのままを感じさせてくれる。
カメラは中央線車内から、この夜の舞台、高円寺の居酒屋「タイフーン」へと移る。
椅子席20名に立ち見という小さな会場は満員。渡さんと膝がくっつくほどの距離でお客さんが見守る。
この夜初めて手にしたという友人の遺品マーチンD-45(1972年製)を念入りにチューニング。1曲目の「仕事探し」に始まり、計14曲をたっぷり聴くことができる。 歌の味もさることながら、おしゃべりが楽しい。 解説によれば、この夜の話術は格別だったそうだ。 ユーモアを交えた中に、生きていくというリアルがにじみでて ぐいぐいと高田渡という人が好きになっていく。 この夜は、定番の「生活の柄」に代わって 「夕暮れ」がラストに歌われる。 そして終演。 渡さんは店を後にして、角を曲がり消えていく。 「死んだなどと言う必要はない。最近見かけませんねと言われたら、 見かけませんと言っときゃいいんだ」 とライブで渡さんは語った。
どうしても死と重ねてしまい、せつなさがこみ上げるが まずは、あまり感傷的にならず 久しぶりですね、と声をかけるつもりで その歌に耳を傾けるのがよいのかもしれない。
中川イサト、中川五郎氏によるコメントも重なって 時に酒を飲み迷惑をかけることがあっても、多くの人に愛され続けたその理由が
“いつもの夜”に浮かび上がる。
●2017年4月29日(土)~ 「アップリンク渋谷」 http://www.uplink.co.jp
初日上演後ゲスト 高田漣。 連日ゲスト出演予定。詳しくは公式サイトにて。 ●5月13日(土)~ 横浜「シネママリン」 http://cinemarine.co.jp
●5月下旬~ 吉祥寺「ココロヲ・動かす・映画館○」(4/15開館)
http://maru-movie.com ほか全国順次公開予定 ●特別先行上映4月15日(土) 岐阜・ワタルカフェ高田渡トリビュートライブ“Just Folks”岐阜・北方編 ●特別先行上映4/16(日)東京・青山CAY 高田渡トリビュートライブ“Just Folks”青山編
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まるでいつもの夜みたいに (74分)
出演:高田渡 中川イサト 中川五郎
監督・撮影・編集 代島治彦
語り:田川 律
題字・絵:南 椌椌
ピアニカ演奏:ロケット・マツ
配給協力:アップリンク TONIE
製作・配給:スコブル工房