[前編] 4人で走り続ける。 生まれついてのバンドマン! 三宅伸治 & The Spoonful インタビュー


三宅伸治&The Spoonfulの1stアルバム『Welcome Home』が7月15日にリリースされた。

自粛期間中に録音されたという13曲。しかも新曲づくしだ。

ライブのできない期間に録音を行うミュージシャンは少なくないが、スタジオ閉鎖期間もある状況下において、バンドとしては最速のリリースではないだろうか。

そこに映された音楽、ライブ、バンドへの強い思いを自身の言葉で聞きたくて、初めてのスタジオ配信ライブを終えたばかりのメンバーを訪ねた。

★☆三宅伸治 &The Spoonful 

三宅伸治(vo.g) 高橋”Jr.”知治(b) KOTEZ(hca)  茜(ds)

◆合宿みたいで楽しかった! 自粛解除翌日からレコーディング

――春にツアーがキャンセルになりましたが、その後アルバム・リリースが速くて驚きました。今回はプライベートスタジオで録音されたとか?

三宅伸治(以下:三宅)● うちに防音した部屋があるのですが、自粛解除になった翌日すぐ集まって録音しました。ベーシックな部分を録音するのに2~3日。音を重ねる作業やコーラスに時間がかかりました。

高橋”Jr.”知治(以下:ジュニア)● 全部で6日間だったと思います。

KOTEZ● 機材の関係もあり限られた条件の下、音質にこだわり始めたらキリが​ないけど、この後どうなるか分からないので、一刻も早く録音しないとという気持ちの方が強かったね。でも合宿みたいで楽しかった。三宅さんの家はレコードもいっぱいあるし 、ジュニアさんは料理がうまいし。

茜● 久しぶりに人に会えたのが、このメンバーでうれしかった! 三宅さんはフットワークが軽いし、 このバンドは、録音・通販・デザイン、雑用まで4人それぞれ得意なことがあるんですよね。

――三宅さんは初めてエンジニアも担当したそうですね。

三宅● 3人が演奏しているときのアイデアは基本的に3人にまかせて、エンジニアに徹していました。おととしの誕生日にメンバーが、スマートフォンでレコーディングができる iZotopeの「SPIRE STUDIO」をプレゼントしてくれたんです。それが陽の目をみました。

ジュニア● 俺も同じ機械を持ってるから録音をシェアしようとしたんだけど、最初はなかなかうまくいかなくてさぁ。

KOTEZ●エンジニアをしながら、古いバンドだなって苦笑いしてましたよね(笑

三宅● いい意味で(笑)。客観的に聞きながら、ここはリバーブを増やしてといったことはしましたよね。音量の心配はあったんですが、茜ちゃんにはやっぱりナマのタイコを叩いてもらいたくて相談しました。

茜● 今回、新たにひと回りコンパクトなセットを買ったんですよ。

◆1人じゃ言えないことも4人なら伝えられる

――ライブでやってきた曲を録音するのではなく、オール新曲という点にも驚きました。

三宅● 家にいる間に、50曲ほどできました。普段から昨日は1日に2曲作ったから今日も2曲作ろう、と自分に課すようなところがあって、そのうち何やってるんだろう・・・・・・って止めていくんですけど、今回もそんな感じでしたね。とりあえず俺は歌を作ることしかできないし、一方で曲作りは、どこか遊び道具のような部分もあるんです。誰かが喜びそうな曲を書いたり、セッションを想定して作ったり。今回は、その中からバンドでやったら楽しいだろうなと思う曲を選んでいます。

――最初からThe Spoonfulを想定して書いた曲もあるのでしょうか。

三宅● 4人それぞれに歌うパートがある<Life Line>は、メンバーに歌ってもらおうと思って書きました。一人じゃ言えないことも4人なら言える。バンドには、そういう良さがあります。

ジュニア● ソロで歌うときと意味合いが変わってくるかもしれないね。だけど、12小節を4人で割ったら3小節ずつなのに、なんでオレは2小節なんだ!?(笑

――確かに<Life Line>は、4人とも歌えるThe Spoonfulを象徴していますね。音楽はライフラインだ、ライブハウスは必要だと言い切った上での「生まれつきのバンドマン」というフレーズには覚悟のようなものを感じました。

三宅● 切実な気持ちを歌にしたいなと思ったんです。決してきれいごとを言ってるわけじゃなくて、この年齢で音楽を続けているのは、そういうことなんだと思います。バンドマンって“バンドマン組合”みたいなところがありますから。

ジュニア● 寄り添って生きていくみたいなところはあるね。 歌いながら、あぁ、オレって生まれつきバンドマンだったんだって確認しました。

オレ、自粛中に卵・牛乳といった必要な食材の覚書として、偶然なんですけど、必需品という意味で「Life Line」と書いて冷蔵庫に貼ってたんです。だからこの曲を聞いて、そうか、オレのライフラインは音楽だよな。見事に歌にしてくれたなと思いました。

―― バンドマンへのエールである同時に、自分自身の音楽への情熱を問われている感じがしました。タイトルの『Welcome Home』というタイトルはどこから?

三宅● シンガー・ソング・ライター、ウェイン・ベリーの『Home At Last』に収録されている<Welcome Home>にヒントをもらってタイトルから作った曲です。家で録音しているけど「ついに家に・・・」もちょっと違うかなと思いながら聴いていたんですが、アルバムの中にその曲があって。ジェシ・エド・デイヴィスやジャクソン・ブラウンも参加しているアルバムです。

――三宅さんの書く曲は一人称が「僕」「俺」だったり「僕ら」だったりします。この曲は「僕ら」ですが、意識して使っているのでしょうか。

三宅●「僕ら」って、いい言葉だなぁと思います。わかり合える人同士を結びつけるような。<Welcome Home>は、みんな自分の家に来てという気持ちもあるし、バンドならお客さんに来てという気持ちにも通じますよね。

◆感じたことを歌にする。自粛期間に作った50曲から選ばれた13曲

――<そのあとのメロディ>の冒頭には、ジュニアさんの声でボブ・マーリーの有名な言葉が引用されています。全体に希望へ続く歌という印象を持ちましたが、<アベコベのブルース>のように政治への怒りを滲ませている曲もありますね。

三宅● SNSでは不満を目にするけど、歌にした人は誰もいないんじゃないですか。みんな、ある意味、賢くなってるなという気がします。みんなが思っていることを歌にしないっていうのはヘンだなと思うし、真っ当なことを発言するのはダサいといった風潮には疑問を感じます。

ジュニア● もやもやしてた心が晴れましたよ。<ブギで生きよう>の「Fuck you very much」っていうフレーズもすごいよなぁ。

三宅● あれは『Funk You Very Much』っていうカセットを聴きながら、そうだよなぁ、この状況はFuckだなぁと思って作りました。辛い時期に最初にできたのが<ムーンライト>です。

――言葉を装飾せずシンプルに書かれた歌が多いですね。

三宅● 言葉を装飾できない歌、したくない歌もあります。俺は曲を書くしか術がない。いつでもそうなんですが何か起きたら歌をつくるし、どんな状況でも書けるというのはありますが、こうした状況でいつも以上に書きやすかったかもしれません。

ジュニア● 思ったことを自分の言葉で曲にするのが三宅さん。俺はベーシストだけど、歌いたいことをいつか形にしなければと思っていたときに、「やればいいんじゃない」と崖っぷちに立つ背中を押してくれたのも三宅さんでした。

KOTEZ● 三宅さんの歌には喜怒哀楽すべて入ってる。よく聞くと暗い部分が描かれていたりしますよ。

――三宅さんが曲を作るとき最も影響を受けているのは誰ですか。

三宅● ボブ・ディランですね。曲の形態はブルースやロックンロール、レゲエだったりしますが、転がっていることを何でも歌にするようなディランの姿勢には影響を受けています。今年の春リリースされたアルバム『ラフ&ロウディ・ウェイズ』も、ともすれば、じいさんが昔話をしているようにも聞こえますけど、それが今の時代に大事なことでもありますよね。

――今回書かれた歌は、普遍的な歌になっていく可能性があると思いませんか。

三宅● 普遍的になったらうれしいですね。何ごとも伝えていくことが大切なのかなとは思います。そうなればうれしいですね。

――今日のラスト・ナンバーは定番<Jump>でしたが、新曲から自然な流れが生まれて、これまでと違うメッセージが聞こえた気がしました。

ジュニア● 歌いながらそう思った。違って聞こえたかもな。

KOTEZ● 新しい<Jump>が生まれたよね。そもそも久しぶりにこのメンバーで演奏して今までと全然違いました。バンドだなって感じがした。

後半に続く 「やれることをやるしかない。Spoonfulだから成長できること。」