築地の魚市場から生まれたブルーズ。MAKI 66歳でのCDデビュー
身体を使って働き続ける男にはブルーズが似合う。 それはおそらく肉体で生きていることを感じる場面が多いからだろう。
66歳でデビューを果たしたシンガーMAKIは 移転に揺れる築地の市場で働いている。
1970年代、彼は下北沢の「マザー」という店を拠点にしたマザーハウス・ブルース・バンドで歌っていた。 シモキタに大勢のブルース・ファンやロック・ファンが吸い寄せられていた頃の話だ。 だがレコード・デビューの機会には恵まれず、いつしか早朝から築地で働く生活が中心になった。
仕事は場内を走り回るターレット(通称ターレー)を操っての運搬。
この曲も、ターレーに乗っているときにイメージを膨らませたらしい。
一度聴いただけなのに、ひと息ついた時、ふと彼の歌声が心の中でリフレインしていることに気づく。ちょっとクセのある歌い方ながら、気持ちがストレートに染みこんでくる。
プロデューサーでもある井出隆一(元ウエスト・ロード・ブルース・バンド)の
ピアノもメランコリックに響く。
日本には、ニッポンならではのブルーズの系譜がある。 ブラック・ミュージックが持つソウルフルな部分と、連綿と庶民に愛されてきた歌謡曲とが結びついたとき、情を揺さぶる音楽が生まれる。
泣いてすがる演歌とはまたひと味違う、生きることのせつなさを分かち合うような歌。
バーで、街角で、疲れて帰った家のソファで
聞こえてきたメロディに
あぁいいなあとつぶやく人が見えるような気がする。
早朝からの仕事ということもあって、気軽にライヴは行えない状況らしい。だが、待ちわびたファンの前で歌声を披露する日は近いだろう。

築地フィッシュマーケットブルーズ
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