初来日レポート クリスタル・トーマスwith Bloodest Saxophone

Crystal Thomas with Bloodest saxophone

2018年12月22日 下北沢440  Photo by Ayumi Fujita

結成20周年を迎えたブラサキことBloodest Saxophoneが、2018年11~12月に、テキサスのオースティンで録音した2枚のアルバム『 I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU』『IN TEXAS』をリリースした。

前者は、BLOODEST SAXOPHONE feat. TEXAS BLUES LADIESとして現地で活躍する5人の歌姫をフィーチャー。歌に対するブラサキの真摯な魅力が存分に感じられると共に、アメリカでもなかなか出会うことのできないバンドを得て、女性シンガーたちも思いきり自分を表現している。

そんな歌姫の一人がクリスマスの頃、初来日を果たした。彼女の名前はクリスタル・トーマス。本作でカヴァーした山下達郎の名曲「ユア・アイズ」は7inchとしてリリースされ注目を集めている(カップリングはラッキー・ミリンダーの「ザ・グレイヴ・ヴァイン」)。 ルイジアナのシュリヴポートを拠点とするクリスタルは、19歳のときにジョニー・テイラーのトロンボーン奏者となってブルースとソウルに目覚めたという変わりダネ。テキサス~ルイジアナを中心に南部のインディ・シーンで活躍してきた。アルバムには『LYRICAL GUMBO: ESSENCE OF THE BLUES』『Drank Of My Love』などがあり一定の評価を得ているが、ローカル・ミュージシャンであることに代わりはない。

まさにブラサキとの出会いが世界への扉を開いた。奇跡の来日といっても差し支えないだろう。

さてライヴはクリスタル・トーマスを歓迎するかのような「Blues From Louisiana」でスタート。

「ナイトトレイン」「フライング・ホーム」といったジャンプ・バンドの鉄板ナンバーに「スリープ・ウォーク」なども。トロンボーンのCoh、ベースのTHE TAKEO が脱退し、新たにベーシストとして服部将典が加わった新生ブラサキを見るのは初めてだったが、甲田ヤングコーン伸太郎(tenor sax)が、メンバーをいじりつつ上手に雰囲気を盛り上げていく。

7曲目でいよいよクリスタルが登場する。大柄で存在感はあるが、写真の印象よりやさしく愛らしいムードだ。

1曲目はジョニー・アダムスのカヴァー「ルージング・バトル」。声がいい。ブルース・ウーマンと言えば、シャウトで圧倒するとか、マイクを向けて煽るようなイメージを持つ人も多いだろう。しかし彼女はふくよかな歌声で聴く者の心を包むタイプだ。ステレオタイプなブルース・ウーマンのフィルターを通じて対峙すると、彼女の繊細な表現を聞き逃してしまうだろう。

続く「ジャスト・ライク・ア・フィッシュ」は、南部のスターであったジュニア・パーカーのナンバーだが、今回アルバムで取り上げている曲はブルース・ファンでもなじみのないナンバーが多い。逆に言うと予備知識なしに曲の良さを堪能できるというわけだ。色のついていない曲と、クリスタルの素直な歌声は相性がいい。ブルースは歌である。そんなあたりまえのことを思い出させてくれる、心地よい時間が過ぎてゆく。

3曲目はジャニス・ジョプリンのブルース・ナンバー「ワン・グッド・マン」。 そしていよいよ「ユア・アイズ」へ。ロマンチックな達郎メロディを丁寧に歌うクリスタル。ブラサキも入魂のプレイでじわじわと盛り立てる。大切に何度もリピートしたくなるアルバム(7inch)もぜひ聴いていただきたい。

ラストの「メリー・クリスマス・ベイビー」は、ブルージーさが殊に沁みた。彼女のブルースをもっと聴いてみたい。

クリスタルはこの後アンコールで「聖者の行進」を歌った。決してモジョ・ワーキンではないところに彼女の活動しているシーンを思う。

日本初公演ということで、緊張もあっただろう。その中で、力まずに 匂いのある“チャーミングな歌”を聴かせてくれたと思う。 今回、東京で3か所、その後、ブラサキと香港公演も成功させたクリスタル。スポンジが水を吸うように、多くの貴重な経験をしたという。日本発のブラサキという強い相棒を得て、アメリカ南部のローカルから飛び出したクリスタルが大きく花開くのはこれからだ。

もしかすると私たちはものすごいシンデレラ・ストーリーを目撃しているのかもしれない。

BLOODEST SAXOPHONE feat. TEXAS BLUES LADIES 「YOUR EYES 」 b/w THE GRAPE VINESIDE-A YOUR EYES (Vocal: Crystal Thomas) SIDE-B THE GRAPE VINE (Vocal: Lauren Cervantes & Angela Miller of the Soul Supporters) ¥1,600  Mr. Daddy-O Records 発売元:株式会社スペースエイジ 【動画】7inchシングル宣伝動画→

BLOODEST SAXOPHONE feat. TEXAS BLUES LADIES 「 I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU 」 Mr. Daddy-O Records SPACE-016 ¥2,500 (税抜)

アルバム全曲ダイジェスト→https://youtu.be/AKkp2LGKH20

BLOODEST SAXOPHONE 「IN TEXAS」

Mr. Daddy-O Records SPACE-017 ¥2,500(税抜) LABEL: Mr. Daddy-O Records Pork Chop Chips (収録風景)

https://www.youtube.com/watch?v=pqI7QIsJkR4